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清水:孔版でやってほしいとかズラしてほしいとか、無理な注文、普通の条件じゃない注文はリスキーだったり面倒だったりしますが、山川さんご自身は、それを楽しめるタイプですか?

山川:いえ、タイプじゃないです。基本的にビジネスなので。

清水:予想外の答え!(笑)

山川:ビジネスとして考えて、ズレたりするとクライアントさんからクレームがきて、クリエイターさんに迷惑がかかるでしょう。鰺坂さんに注文いただいたり、ミリバールさんに納品したこともあるんですけど。

清水:鰺坂さん一番強者っぽい。すごい要求しそう(笑)。

鯵坂:何度断られても、ズレても構わないからやってくださいって。ほんと渋々やってもらって。

清水:印刷屋はいかにズレないように仕上げるか苦労しているのに、何のためにって思いますよね。

山川:孔版は断っていたのですが、ものを作る方ってこだわりが強いので「クレームは言いません!ズレて構いません!」という方が一時多くなって、その声に後押しされてレトロ印刷を始めました。
その時から、いつかお店を持ちたいと思っていました。クリエイターさんと一緒に、手と手をとりあってものづくりをしたかったんです。去年6月に、90坪くらいの店舗を借りてKO-HAN(コーハン)というお店を開くことができました。2階で印刷機を回して、1階の半分ぐらいを紙の在庫置き場に使おうと思ってたんですが、あまりに広いから、クリエイターさんが自由に使える場所にしたくなって。
本当に皆さんよく来ていただいて、友達同士で和気あいあいと、私も店に居て見てるだけで楽しいです。手ぶらで来ても大丈夫です。手描きで描いてもらった絵をその場でスキャンして版を作り、スタッフが印刷のレクチャーをします。版とインクは買っていただきますが、朝から晩まで自由に刷ってもらえます。オープンしたばかりなんで、とにかく来ていただかないと。

清水:それやったら若いクリエイターさんとか入り浸ってしまいそうですね。写真でみると、お客さんって、案外若い女性が多いですね。

山川:そうですね。女性の方がパワーあってすごいですね。お友達同士とか。

清水:レトロ印刷女子みたいな(笑)。

山川:そう言っていただいたら嬉しいですね。
つくった作品や注文した印刷サンプルを自由に貼っておける「JAM置き」や、クリエイターさんがレトロ印刷を商品化して、作品のサンプルを店頭で販売するなど、クリエイターさんを応援する場をつくるスタンスで、少しでもお役にたてるようにと考えています。

清水:次はグランファブリックの河上さん、お願いします。

河上:明治の終わり頃に建てられた古民家をセルフリノベーションで改装して、2階が本業の設計事務所、1階はカフェ・ギャラリー・雑貨販売をやってます。iTohenさんと同じくらいの時期にオープンして12年経ちました。きっかけは知人の紹介で、20年くらい空き家になっていた家を借りることになって。土地が140坪ぐらい、建坪も1階2階で50坪ちかくあるので、友達とか仲間で集まって、借りれたけどどうしようと相談を。

清水:借りてから、どうしようと(笑)。

河上:そう、もともと僕は事務所用の物件を探していたので。当時スタバで店長をしていた友人が、カフェの立ち上げをしてくれました。また、周りにアーティストが多かったので、作品を展示できるスペースも作って、設計事務所、カフェ、ギャラリーの運営をする形でスタートしました。僕の本業はインテリアデザインで、今年ジャーマンデザインアワードという大きな賞の大賞と、特別賞をいただきました。

清水:自分のお店を持っていることで、本業のインテリアデザインに影響はありますか?

河上:うまく説明できませんが…密接に関係しています。どちらもないと成り立たないです。
お茶を傍らに1時間、2時間。本があったり、雑貨があったりする空間を豊かにすごす、その仕掛けのひとつにコーヒーがある。「お茶する時間を考える」というのをスタッフの共通のテーマとして運営しています。
その場所をどうしたいのか、どんな人が集まって、なにが起こりえるのか、そこにはかならず時間が伴う話なんですね。そこも含めてすべて空間デザインだと思っています。
お店で出しているのは、スミソニアン渡り鳥センターという機関が認証したバードフレンドリーコーヒーとうもので、畑を作らずに野生の森の中で栽培したコーヒーです。面白いのは、飲む人はそれを知らなくても、売上の一部が森に寄付される、そういうのが持続可能だなと思って。もうひとつ、ユニセフのTAPプロジェクトにも毎年参加しています。世界水の日というのがあって、1ヶ月くらいの期間、水に対して寄付する企画です。すごくいいキャンペーンだと思うので、カフェとかレストランとかされてる方、ぜひ参加していただければ。

清水:グランファブリックさんでも「マルシェ」をされてますね。

河上:2年半前に阪急百貨店のスークで、うちで扱ってるアーティストの作品60組全てを持って出店しました。準備も片付けものすごく大変だったんですけど、忘れられない良い経験をさせてもらい、去年は自分の店でグランファブリックマルシェを開催しました。好評だったので今年もvol.2をやったのですが、去年の倍以上の方に来ていただいて、すごく喜んでいただけました。

清水:次は僕からの質問ですが、お店をやっていて、よかったなと思う瞬間があったら教えてもらえますか。

河上:カフェなので、色んな人が来てくれるんですね。皆さん気軽に訪ねてくれて、いろんな出会いやいろんな仕事につながる。そういう出会いの場所を、自分でつくれているのが一番嬉しいことです。

清水:ちなみに奥山さんとかも、同じような感じなんですか?

奥山:人と直接触れる仕事させてもらってるのが嬉しいです。今はブランディングとか、建築のコーディネートをよくさせてもらってますが、もともとは僕が最初やりはじめたカフェがきっかけです。お店は出会いの場で、自分なりの企画のプレゼン、実験の場でもあります。

鯵坂:やっぱり人と出会う装置としてお店を考えると、圧倒的に出会います。それにお店に来ていただいた方にお仕事をもらうと、まず失敗がないしクレームもありません。

清水:そうか、鰺坂さんのお店、仕事ぶりを知ってもらった上でお仕事をいただくんですもんね。

山川:うちは中津で、そんな人通り多くない所にあるので、うちをめがけて来ていただくだけでも嬉しいです。来てくださった方が、ああでもないこうでもないって印刷をしている様子をみるのが一番、引っ越ししてきてよかったなって思います。こういう性格なんで、お客さまにあまり声かけることはしないんですけど。

清水:みなさん、山川さんは黙ってるだけで、ほんまはすっごい嬉しいんやって思ってくださいね(笑)。

山川:声かけてもらったら結構喋りますんで。

清水:めっちゃ引っ込み思案の社長ですね!みなさん声かけたげてくださいね(笑)。

寺脇:ものづくりと一緒で、日本でアート作品をつくっている作家さんも苦労されています。店にギャラリースペースを設けているのは、もっとくらしの中にアートを取り入れてもらいたいからです。雑貨を買いに来て、アートには興味なかったけど衝動買いしてくれる人がいたら、その瞬間はやっててよかったって思います。

清水:みなさんもアートを身近に、豊かなくらしを伝えていきたいという思いってありますか。

鯵坂:アートが存在する前に、それをつくる人が存在していて、誰からも依頼も発注もされていないのに、一生懸命つくっている。そういう想像力を持って作品を見ていると、なんていうか、可愛らしく思えるんじゃないか。それを愛というと嘘くさいかもしれないけど、そういう愛を注ぎこんであげれば、今の世の中の汲々とした感じが少し緩んで、寛容になれるんじゃないかと思います。
究極、アートって要らない、必要じゃないかもしれないけど、不可欠だと思います。難しいとか、分かってないとか思われたら嫌なんて思わず、もっと気軽にギャラリーにお越しくださったらとても嬉しい。

清水:商品や作品をどんな風に見てもらいたいか、つくり手がどんな想いを持っているかで、見せかたや伝わり方が大きく変わってくると、僕自身デザインマルシェを見ていて思います。
お店をしていると、お客さんや色んな方との関わりがでてくると思いますが、人との接し方で、気をつけたり工夫してることはありますか?

山川:孔版は分かりにくいので、敷居が高くなっちゃう。でも孔版印刷はだれでもできるんです。それに、ものづくりの正解は誰が決めるものでもなく、正解はない。作って満足して喜んで帰っていただくっていうのがスタンスとしてあるので、垣根が低いように説明しようと心がけています。

鯵坂:僕は基本的に喋るのが得意でも好きでもなくて、一日中黙ってても平気な方で。でもお店では自分の人格を置いとくというか、「おせっかいおじさん」をテーマにして立ってる感じ。あとは直感で、話しかけたら逃げる人には無理強いしませんが。

清水:そういうのってすぐわかるもんですか。

鯵坂:わかります、わかります。

清水:面白い。どうですか、その距離感つかめる感じ。

河上:何年かやってると身に付きますね。言ってはることは分かります。僕は逆に割とほったらかしの方。僕からお客さんに話かけることはなくて、興味もっていただいて、なにか尋ねられたら対応はするんですけど。うちで展示してくれるアーティストさんにも、好きに使ってこの空間って。基本的に、作る作品や展示の仕方に関してどうこう言わない。

清水:奥山さんはどうですか、ギャラリーで作家さんとお付き合いされて。

奥山:ケースバイケースですね。全部お任せする時も。ただ、うちで展示をしてもらうことによって、作家さんに何を積み上げるかというのがあります.何かプラスになる意味を。

寺脇:うちの場合はギャラリーがお店の一部になっているので、かしこまった展示というより、家にアートを飾るような自由な空間です。私はなるべく口出ししたくないのですが、逆に、作家さんの方が店のイメージに合わせようとするので…できれば自由にやってもらいたいです。

清水:最後になりますけど、これから皆さんのお店をこんな風にやって行こうとか、この先の目標などあれば。

河上:あっという間に12年経っちゃって、あまり先のことは考えてませんが、いろんな繋がりがすごくたくさんあって、12年の蓄積がものすごくて。なるべく出会った人たちと一緒に、楽しい色んなことしていきたいなっていうのはありますね。関係を大事にしたいというか。

山川:お店が1年半くらいで、もっとクリエイターさんが来るように宣伝していかないといけないのは当然です。そしてもっとシルクスクリーンを使っていただこうと思っています。珍しい紙を見つけたり、ハードの部分を提案してクリエイターさんを支援しようと。あと最近海外のお客さんが増えたので、大きな夢ですが、海外にクリエイターさんの作品を紹介していきたいです。

奥山:最初の店から20年近く、地域とのかかわりだったり、ミュージシャンやクリエイターなど関わった人が活躍してきて違うとこで名前を聞いたり、一軒の小さな店が街にある、場所が有る可能性が知りたくてやってきました。
そして矛盾することを言いますが、僕個人は、場所が無い可能性も知りたいんです。今まで場所が有る前提で物事が進んでいて、それは楽しいけど行動が限られてくる。最近自分が興味あることとか、年齢も関係あるのかもしれませんけど。どちらの可能性も知りたいです。

寺脇:気づけば3年経っていますが、まだ半年くらいの気分です。レイアウトにしても運営スタイルにしても。やっと落ち着いて見直す気持ちになれたところです。また、自分たちで企画してイベントすることが多かったんですけど、もっといろんな人たちと協力してやりなたいと思います。

鯵坂:奥山さんが言ってらした、お店から開放されたい思いも当然あります。でも、ラーメン一筋50年みたいなお店に、敵いたいなって気持ちがあるんです。変化に乏しいかもしれないですけど、店を使ってくださる方も居て。粛々と淡々と、長く続けていきたい。あとひとつ夢があって、もともと版画を教えていたので、本音を語れる教室というか学び舎というか、後にやれたらなと。

奥山:KO-HANに毎日行ったら無料で教室に使える(笑)。

鯵坂:なんか鰺坂さんいつも来るなー、みたいな。

清水:それおもしろい。できますよね(笑)。
では、時間もきたところで知恵マルシェ、お店の回はこれにて終了したいと思います。長い時間色々お話聞かせてもらって、ありがとうございました。